マインドセットという言葉を聞いたことはありますか?
マインドセットとは価値観や心の在り方を意味する言葉です。
スタンフォード大学心理学教授キャロル・S・ドゥエック氏は、20年以上にわたりマインドセットがその後の人生にどのような影響を与えるのか、学問、芸術、スポーツ、ビジネスの分野で偉大な功績をあげた人と、あげられなかった人とでは、いったいどこが違うのかを研究し科学的に実証しました。
著書mindset(邦題:マインドセット「やればできるの研究」)はキャロル氏の20年以上の研究から持って生まれた能力は変化することはないと信じる「硬直マインドセット(fixed mindset)」と、人は努力によって知能や能力は成長させることができると信じ、難しい問題にも挑戦する成長性の高い「しなやかマインドセット(growth mindset)」の2種類存在すると結論づけています。
そしてそれぞれのマインドセットをもった人の知能や行動、その後の成長にどのような影響があるのかを実在の経営者やスポーツ選手、教育現場での実験結果をもとにまとめ上げた内容になっています。人はどちらか一方のマインドセットを持っているのではなく分野ごとにマインドセットを選んでいるとも述べています。
例えば、音楽や絵は生まれ持った才能ですべて決まっていると考えるが、スポーツは練習することで上手になると考えている人は多いのではないでしょうか。
TEDでのキャロル氏の公演動画は800万再生を越えています。ぜひご覧になってください。教育だけでなくあなたの考え方にも良い影響を与えてくれるはずです。
褒め方を少し変えるだけで、子どもや部下が、チャレンジ精神あふれる成長し続けるしなやかマインドセットに変えることができます。キャロル氏の著書マインドセットを元にどのように褒めればしなやかマインドセットになれるのか解説していきます。
硬直マインドセットとは
自分の能力は石板に刻まれたように固定的で変わらないと信じることです。硬直マインドセットの人は生まれ持った知能や能力は変化することはないと考え、自分の能力を繰り返し証明せずにはいられない。ことあるごとに自分の知的能力や人間的資質を確認せずにはいられない人たちで、しくじらずにうまくできるだろうか、認めてもらえるだろうか、突っぱねられやしないか、勝ち組でいられるだろうか、負け犬になりはしないか、といつもびくびくしています。
しなやかマインドセットとは
人間の基本的資質は努力しだいで伸ばすことができると信じることです。しなやかマインドセットの人は持って生まれた才能、適性、興味、気質は1人ひとり異なるが、努力と経験を重ねることで、だれでもみな大きく伸びていけると考えています。
褒め方でマインドセットが変わる
間違った褒め方をすると硬直マインドセットになってしまいます。一方で理想的な褒め方をするとしなやかマインドセットになります。
しなやかなマインドセットになる褒め方とは何かを解説する前にテストをしてみましょう。
この中でしなやかなマインドセットになる褒め方は3です。3は結果や能力ではなく、結果に至るために行った過程を褒めています。その結果、子どもは学ぶことに関心が向きます。学ぶことで結果に至ったのだ、難しい問題は学ぶことで乗り越えることができると考えるようになります。
1,2の褒め方は結果や才能を褒めています。これは褒められた子が硬直マインドセットになる褒め方です。結果や才能を褒めることで、自分の能力や他人からどう評価されるかに関心が向きます。難しい問題にぶつかったとき、自分の能力では太刀打ちできないと判断すると避けるようになります。そして、他人からの評価が下がることを恐れ、言い訳をするようになります。
褒め方は知能に影響する
キャロル氏は思春期初期の子どもたち数百人を対象に非言語式知能検査の難しい問題を10題解かせ、その後の褒め言葉でどのような変化があるかを実験しています。
ほとんどの生徒がまずまずの成績。終わった後でほめ言葉をかけた。
ほめるにあたっては生徒を2つのグループに分け、一方のグループではその子の能力をほめた。「まあ、8問正解よ。よくできたわ。頭がいいのね」といったぐあい。そう言われた子どもたちは、アダム・ゲッテルと同じく、有能というレッテルを貼られたことになる。
もう一方のグループでは、その子の努力をほめた。「まあ、8問正解よ。よく頑張ったのね」といったぐあい。自分には何か優れた才能があると思わせないように、問題を解く努力をしたことだけをほめるようにした。
グループ分けをした時点では、両グループの成績はまったく等しかった。ところが、ほめるという行為を行った直後から、両グループの間に差が出はじめた。懸念されたとおり、能力をほめられた生徒たち(〈能力群〉と呼ぶことにする)はたちまち、硬直マインドセットの行動を示すようになったのだ。次に取り組む問題を選ばせると、新しい問題にチャレンジするのを避けて、せっかくの学べるチャンスを逃してしまった。ボロを出して自分の能力が疑われるかもしれないことは、いっさいやりたがらなくなったのである。
努力をほめられた生徒たち(〈努力群〉と呼ぶことにする)は、その9割が、新しい問題にチャレンジする方を選び、学べるチャンスを逃さなかった。
引用では文章が長くなってしまうので、その後の結果を簡単にまとめる
第3回目 生徒全員になかなか解けない難問を出す。
能力群 自分の頭がよくないから解けなかったと思うようになる。問題がうまく解けた後は全員が楽しいと答えたが解けなくなると面白くないと答えるようになる。
努力群 もっと頑張ろうと考えた。頭の良し悪しや解けなかったことを失敗とは思わなかった。難問を出された後もいやになることはなく、むしろ難しい方が面白いと答える子が多かった。
第3回目以降、やさしい問題を出す。
能力群 すでに自信を失っている状態。成績は回復せず、第1回目よりも悪くなった。
努力群 難問に挑戦したことでスキルが上がっていた。その結果すらすら解けた。
知能検査の問題を用いた実験であったことからキャロル氏は以下のように結論づけている。
能力をほめると生徒の知能が下がり、努力をほめると生徒の知能が上がったことになる。
まとめ
能力ではなく努力をほめることで学ぶことに関心が向きます。その結果、しなやかなマインドセットにかわることができます。しなやかなマインドセットになることで、能力を向上させるだけでなく、様々な困難にも立ち向かえるようになります。
この本に出会うまでは、キャロル氏やマインドセット、褒め方が与える影響について知りませんでした。結果を褒めることはむしろ意欲を引き出せると信じていました。私自身が努力を褒められたことがないことや、他の教育者が努力を褒める姿を見たことがないことから恐らく多くの人が同じように誤解しているのでしょう。
Helping children confront challenges requires a more nuanced understanding of the “growth mindset.”
海外メディアのインタビューの中でキャロル氏はしなやかマインドセットの本質を正しく理解していない人が、誤ったしなやかマインドセットを広めている場合があり、危険なことであると述べています。
失敗したときの言葉かけや、頑張りすぎる子への言葉かけなども著書の中に書かれていますが、理論と実践は異なると思いました。正しく理解し実践できるように何度も本を読み返し、アウトプットしていきたいです。
富田学院では科学的に実証されている教育方法を柔軟に取り入れ、指導方法をアップデートしていきます。
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